高速移動環境下でインターネット接続によるマルチメディア通信を実現するための問題点の解決に努めた。 (1)外部エージェントの階層化とMoMプロトコルの組合せによるマルチキャストトラヒックの削減 移動端末のためのインターネット接続プロトコルとしてモバイルIPが注目されている。このモバイルIPを実時間メディアに適用するために、ハンドオフ遅延低減のための外部エージェント階層化方式、及びマルチキャストトラヒックの集中を回避するMoMプロトコルが提案されている。そこで、この二つの方式を組合せることで、滑らかなハンドオフを実現しつつ、同時に網全体のマルチキャストトラヒックを削減する移動管理アルゴリズムを提案した。またシミュレーション結果として、提案方式によって最大30%程度のトラヒックを削減できることを明らかにした。 (2)マイクロモビリティ環境における経路最適化アルゴリズム モバイルIP方式とは異なり、より狭い範囲での頻繁な移動と広帯域アクセスを前提としたセルラーIPプロトコルが検討されている。ただし既存の方式では同じゾーン内に属する端末間の通信が輻輳原因になる危険性があり、これを回避するための経路最適化アルゴリズムを提案した。またシミュレーション結果として、提案方式がスループットを大幅に改善できることを明らかにした。 (3)移動環境に適した階層化マルチキャストプロトコルの改善 IPマルチキャストの制御プロトコルとして階層化マルチキャストと呼ばれる方式が知られている。しかし、これをそのまま移動体環境に適用すると、ハンドオフによって大幅な特性劣化が生じてしまう。そこで、網へのアクセス手段も階層化し、それを階層化ストリームに1対1に対応付けるマルチキャスト制御アルゴリズムを提案した。さらに、シミュレーション結果として、提案方式によってハンドオフの影響が大幅に低減されることを明らかにした。
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