研究概要 |
本研究では,大規模な分散データベースが崩壊した後の,一貫性回復操作を支援するためのバックアップ機構について考察した.はじめに,データベースの全コピーであるフルバックアップコピーの生成技法,および分散システムの一貫性維持に関する技法について重点的に検討した.次に,その結果を踏まえて,分散データベースの回復機構を統括する分散アルゴリズムについて検討をはじめた. まず,分散システムにおけるバックアップオーバヘッドの軽減と一貫性の保障とを目指して,分散システムの最適チェックポイント生成頻度について考察した.チェックポイント生成アルゴリズムおよびロールバックリカバリアルゴリズムについては,KooとTouegのアルゴリズムを想定して,確率的な評価モデルを構築した.ここでは,特に,周期的な分散チェックポイントの生成がシステムにあたえる影響に着目し,2つのプロセスからなる分散システムの最適チェックポイント生成頻度について評価した. また,分散システムの障害回復技法の中心的な要素である,フルバックアップやチェックポイント生成を実行する分散アルゴリズムの起動プロセス決定の問題も考察した.ここでは特に,プロセス故障を考慮した非同期単方向リング上のリーダー選挙アルゴリズムについて検討した.そして,非同期単方向リング上のリーダー選挙問題において,プロセスに故障が生じても正しく問題を解くことのできるアルゴリズムを提案した.本アルゴリズムは,Chang-RobertsのアルゴリズムCRを基にして,実行中に本来リーダーとなるべきプロセスに故障が生じても,その次に相応しいプロセスをリーダーとして選出する.シミュレーションによって,本アルゴリズムの実行時の平均メッセージ数を評価した結果,アルゴリズムCRとほぼ同じメッセージ数で問題を解けることなどが明らかとなった.
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