高速かつ大容量のデータ通信を光周波数領域で行うために、波長分割多重化(WDM)方式ならびにそのシステム構成素子の研究が盛んに行われている。本研究では、更なる情報伝送量増加を図るためにWDMと多値の光振幅を組合わせた信号を利用する通信方式において、受信信号を分離する素子に関する研究を行った。即ち、光導波路の一部に非線形光学効果を有する誘電体を用い、そのコア部分に周期的な屈折率変調部を設けて異なる振幅および波長を持つ光信号を異なる方向へ放射・分離する素子の特性について検討を行った。解析法として時間領域有限差分(FDTD)法を用いたシミュレーションを行い、その基本的な放射特性を得ることが出来た。なお、実際の媒質には線形および非線形分散性があるため、その効果を取り入れるために分散性媒質を取り扱えるFDTD法を用いた。また、放射特性を明らかにするためにFDTD解析の数値結果から遠方放射界を算出した。 波長1.5μm、全長250μmの二次元周期構造導波路におけるシミュレーション結果は以下の通りである。導波路パラメータの詳細は発表済みの文献を参照されたい。 1.同一波長で電界振幅が4倍異なる2種類の入力信号に対して、最大放射の生じる角度が約45度変化した。 2.同じく、入射信号振幅と最大放射角度の関係を調べると、放射角度が大きく変化する入射電界振幅の閾値が存在した。 3.同一振幅で波長が50nm異なる2種類の入力信号に対して、最大放射角度が約90度変化した。 4.いずれの場合においても非線形光学効果の一つである高調波発生は信号波電力に比べて100分の1のオーダであった。
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