本研究では、光通信システムにおける波長分割多重化方式に加えて光振幅のもつ情報をも情報伝送に利用する目的で、周期構造導波路と非線形誘電体を組み合わせた光スイッチを構成できないかを検討してきた。非線形誘電体はKerr効果およびラマン散乱を示すものと仮定し、このような非線形媒質を取り扱える「周波数依存性のある時間領域有限差分法(FD・FDTD法)」を適用した数値解析プログラムを開発して様々なシミュレーションを行ってきた。2年間にわたる主要な研究成果は次のとおりである。 (1)同一波長で電界振幅が4倍異なる2種類の入力信号に対して、最大放射の生じる角度が約45度変化した。なお、このときの入力信号は連続波である。 (2)同じく、入射信号振幅と最大放射角度の関係を調べると、放射角が大きく変化する入射電界振幅の閾値が存在した。 (3)同一振幅で波長が50nm異なる2種類の入力信号に対して最大放射角が約90度変化した。 (4)いずれの場合においても非線形光学効果の一つである高調波発生は信号波電力に比べて100分の1のオーダであった。 (5)パルス状の入力信号に対してもほぼ同様の放射特性を示した。また、パルス波が2個3個と連続的に入射する場合について、パルス間隔を十分離した場合には放射特性には変化がなかった。 以上の数値解析結果から、周期構造を有する非線形誘電体導波路は異なる振幅・波長を持つ入力光信号をそれぞれ異なる方向へ放射する光スイッチとしての機能をもつことが確かめられた。
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