研究概要 |
無線LANやBluetoothなど、従来は有線で行われていた機器問通信が一般的になりつつあるが、これらは船での利用例を想定していない。外から建物内への電波はガラスや壁により数dB減衰することは既知であるがほとんどが鋼でできている狭い船内の電波伝搬が測定されたことは少ない。そこで、船における電波伝搬を調査するためにPHS基地局(松下製KX-PH470、10mw)を船内に配置し、船内各所での電界測定と誤り率をポイント測定法で測定(岩通製SD-80)した。また、本校の練習船「鳥羽丸」(全長40m、244総トン)と、鉄筋コンクリート(学生寮)の建物内での2GHzの電波伝搬を調べた。 見通しができる通路は減衰が少なく同一フロアであれば双方とも、通信に支障がなかった。船と建物共、階層が変わった場合の個室については壁の数に応じた減衰があり、通路は送信点からの距離が近い(15m以内)場合、距離と電界強度の相関は無く、遠い場合には距離による減衰が認められた。 電界強度とPHSの制御chフレーム誤り率の関係を調べた場合、誤り率が高いのは鳥羽丸では電界強度が高いときに、寮は低いときに発生している。これは、鳥羽丸は干渉による誤りと考えられ、寮内は弱電界による誤りであることがわかり、これらは材質の違いによる反射特性に違いが出たものと考えられる。 大型船での利用を検証するために「北斗丸」(全長125m、5,877総トン)で陸上と同様のオフィスネットワークを無線LANで構築し利用状況を確認した。大型船でも陸上の施設に比べ壁面の数が多く、通路が狭いため陸上より伝搬エリアは狭かった。船内での広い範囲の伝搬のためには反射による誤り率を低下させる電波吸収材を壁面へ利用することで、建物と同様な通信環境で次世代の機器間無線通信が利用できることが明確になった。
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