補助金交付期間の1年目である今年度(平成12年度)は主にk誤り線形複雑度の性質の解明に取り組み、いくつかの性質を明らかにした。 具体的には、既に研究代表者等によってそのk誤り線形複雑度の高速計算法が与えられている標数のべき乗周期系列(系列を構成する有限体の標数に対して、そのべき乗の周期を持つ系列)におけるk誤り線形複雑度の履歴(与えられた周期系列に対して、変更箇所の数kを増加させたときのk誤り線形複雑度の減少の様子)と周期系列の分類の一つである零和条件(周期系列に対して、系列を構成する有限体上における1周期にわたる値の和が零となる条件)の関係を理論的に明らかにした。すなわち、零和条件を満足するべき乗周期系列の第一減少点は2以上となり、零和条件を満足しないべき乗周期系列の第一減少点は1となることを理論的に示した。さらに、2元べき乗周期系列においては、その周期系列の減少点は、零和条件を満足する場合は全て偶数となり、零和条件を満足しない場合は全て奇数となることを示した。 零和条件が極めて容易に判定できる周期系列の分類法であること、M-系列やGMW系列などの理論的、実用的に重要な系列はその多くが零和条件を満足する周期系列であることを考えると、本研究で明らかにしたk誤り線形複雑度の性質は非常に重要であると思われる。 2年目に当たる来年度(平成13年度)は、k誤り線形複雑度における性質の更なる解明、高速計算法における周期に関する制約の除去、また、情報セキュリティ(ストリーム暗号、擬似乱数の構成や評価)の分野や符号理論(線形符号の復号法など)の分野への応用に取り組みたいと考えている。
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