研究概要 |
本研究は,医師の認識・判断の帰納的獲得と医学的知識や既存の処理との相互交換が可能な新しい学習機構を搭載した知的学習型医用画像診断システムの実現を目指し,以下の検討を行った. 脳における例からの帰納的学習のモデルとしてニューラルネットを採用し,前年度において検討した仕組み(処理機構の帰納的獲得と既存の処理による表現)を活用し,知識として蓄えられたデータを既存の処理により表現することにより、両者の融合を試みた. 処理機構の帰納的獲得では,視覚系のモデルを参照して,ニューラルネットをベースとしたモデルを構築した.このモデルにより,医師の判断する臓器(具体的には心臓左心室)を医用画像から抽出する処理を学習により獲得することができるようになった.次に,このように学習により獲得した処理から,冗長な処理及び構造を除去し,主要要素に構造化する手法を開発し,これに対して解析を行うための検討を行った.次に,主要要素を既存の処理により表現するための検討を行った.その結果,獲得された医師の判断アルゴリズムは1次の関数では近似不可能であり,少なくとも2次以上の非線形関数が必要であることが分かった. これらの検討により得られたモデルと知見を活かし,帰納的学習と既存の処理を組み合わせることができる学習機構を構築した.その結果,両者を同時に組み合わせて利用することができるようになった. 今後,帰納的に獲得した知識と既存の処理を,同時に利用できるだけでなく,交換することが可能な機構に発展させることが望まれる.
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