本研究の目的は、電子ビームから放出されるパルス状電磁界の時間プロファイル測定である。このパルスは2.85GHzの加速周波数とその高調波より構成されており、それらの複素スペクトルを測定すれば、元の時間プロファイルを決定できる。この測定に、共振周波数を自由に選ぶことが出来、さらに複数の周波数成分を同時にフィルタリングすることも出来る開放型共振器の採用を提案している。 本年度の当初の予定では、二つの周波数成分に着目し、それらの位相差を測定するために、共振器に二つのポート(開口部)を設け、そこからそれぞれの周波数成分を取り出す予定であった。 しかしながら、試作の結果、発振器を用いた模擬実験では出力が得られたものの、加速器の電子ビームが放出する電磁界は小さく、十分な出力を得られなかった。 そこで、出力ポートを設けず、共振器中にアンテナを挿入する体系に変更を行った。この方式では、アンテナにより強い電界の散乱が発生し、共振器の特性が変化する可能性がある。そこで、特性を評価するために、共振器中に一つのアンテナを挿入し、そのアンテナを移動させることにより、内部電界分布の測定を行った。その結果、境界要素法解析により得られた内部電界分布と比べることにより、アンテナの影響は少いことが解った。また期待通り大きな出力が得られた。 この体系を用いて二つの周波数の位相差測定を行った。二つのアンテナからの出力の、一方に可変長同軸管を挿入し、他方の出力を合成し、非線形を有する検波器にて検波を行った。挿入長に応じて出力が変化し、これらのアンテナ位置での位相差を決定できた。 今後は、複数の周波数の複素スペクトルの計測を目指すと共に、解析により、共振器入射ポートとアンテナ間の位相を解析により求め、最終的な時間プロファイル計測を行う予定である。
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