1.クロスホールデータを用いた反射体検出アルゴリズムの開発 従来、クロスホールデータを用いた反射体検出にはトモグラフィ法、マイグレーション法が用いられてきたがその分解能は十分ではなかった。そこで、超解像スペクトル推定法の一つであるMUSIC法の適用可能性を検討した。本研究では、異なる送信位置から得られる受信アレイ信号において、複数の孤立反射体からの反射波が、互いにインコヒーレントとみなせることを示し、従来適用困難であったアレイ近傍からのコヒーレント波の超高分解能位置推定法の有力な手法を開発することができた。 また、数値シミュレーションにより従来法に比べ高分解能な推定結果が得られることを示した。MUSIC法ではS/N比が分解能に大きく依存するため定量的な比較は困難であるが、4波長離れた直径0.4波長の二つの非金属埋設管についてS/N比23dB程度では、垂直方向で5倍程度、水平方向では従来法では識別できないが、本手法によりその位置まで正しく推定可能であることがわかった。 前年度の研究により、5mの坑井間隔において23dB程度のS/N比は実験的に取得可能となっており、原理的に水平に2m離れた直径20cm程度の非金属埋設管の位置を推定可能であるといえる。これにより、ほぼ所望の性能を有するアルゴリズムの開発は達成できたものと考えている。 2.実験データへの適用 東京ガス(株)において非金属埋設管探査のための基礎実験を行った。しかし、本フィールドは埋立地にあり、地下水の影響も強く、非常に不均質な媒質であったため、本アルゴリズムの実験的検証は困難であった。しかし、このことは、本手法を確立する上で重要な知見となった。 今後、強い不均質中でも適用可能なアルゴリズムも開発するとともに、比較的均質な媒質にフィールドを作成し、実験的検証を行うことが必要不可欠であると考えられる。
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