研究概要 |
電力系統における異常振動の予測に対して,まず2次線形システムに対して投入位相と電流の最大振幅の関係を数式的に導出した.負荷の大きさにより最大電流を与える投入位相が異なり,それらの関係は複雑になるが,数式を用いることにより規則性を明らかにした. また,非線形単相直列共振回路の過渡現象に対してウェーブレット変換を適用し,ウェーブレット変換による異常振動の予測の可能性を明らかにした.適用にあたってはウェーブレット変換を適用する位相とスケールが重要になることを示し,位相シフトを外部入力に同期させることにより一意な予測結果が得られる方法を見いだした.この方法は非自励形の回路における特徴抽出に対して一般的に適用できるものである. また,非線形直列共振回路における分岐現象を解析する方法として,代数幾何学的手法であるグレブナ基底を用いる方法を見いだした.この方法によりパラメータ空間での大域分岐現象を解析することが可能になり,異常振動が発生するパラメータ領域を定めるためには非常に有効であることを明らかにした. 一方,専用マイクロプロセッサに関してはウェーブレット変換を並列に計算するアーキテクチャの開発を行なった.アーキテクチャをハードウェア記述言語(SFL)により記述し,secondsを用いて論理シミュレーションを行なった.また,パーソナルコンピュータをもとにしてシステムを構成するためのPCIバスインターフェイスに関してもSFLで記述し,ウェーブレット変換プロセッサとともに論理合成を行なった.さらに実際にFPGAにマッピングすることにより,33MHzで動作することを確認した.開発したアーキテクチャはダイアディックウェーブレット変換を並列に行なうため,既存のCPUを用いるよりも高速に実時間処理が可能となっている.
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