研究概要 |
本研究では,具体的な作業例としてバイオリン演奏におけるボーイング(弓使い)をとりあげ,人間の感性と身体運動との関係を明らかにすることを目的としている.本研究では次のような手法をとることとした.まず,感性情報である「明るい」や「暗い」といった音色表現語を変化させた場合の熟練者の身体運動を計測・分析する.次に,得られた分析結果を基に動作決定アルゴリズムの構築を行い,実際にハードウエアで演奏させて,構築したアルゴリズムを評価し,感性の身体運動に与える影響を考察する. 本年度は,以下に示すように,熟練者の運動計測システムの構築と評価用ロボットの開発を中心に研究を行った. (1)運動計測システムの構築 運動計測システム構築においては,まず,熟練者のバイオリン演奏動作の計測項目を検討した.そして,本研究では,人間の3次元空間内の運動に加えて,バイオリン演奏における重要な要素である弓圧を計測することとした.運動の計測には,3次元運動計測装置を購入し用いることとした.また,弓圧の計測については,弓にひずみゲージを貼り,その出力から算出する手法を構築した.これにより,本研究で必要となるデータ取得が可能となる. (2)評価用ロボットの開発 構築するアルゴリズムを評価するためには,人間の腕と同等の自由度を有するロボットアームを製作する必要がある.本研究室では現在人間形ロボットアームを開発中であり,これまでに肩と肘の4自由度分が完成している.そこで,本年度は,このロボットアームの手首3自由度部の開発を行った.その形態は,人間と同様に手首の3軸が直交するように,また,手先に弓も含めて約2kgのものを装着可能なように設計した.これにより,ほぼ人間の大きさを有する,ボーイング動作可能な7自由度のロボットアームを完成させた.
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