研究概要 |
ディスプレイを介して人間に情報を与える場合に,画像情報の状態や使用目的によっては画像が短時間呈示になってしまう場合や,作業効率上短時間呈示が求められる場合が生じる。そこで本研究では,映像情報の中でも特に情報伝達で主要な役割を果たしている輝度と色の刺激の処理系とその情報統合に着目して人間の時間特性を明らかにしようとする。本年度は,輝度のみの刺激について時間的な応答変化を示す刺激応答関数(輝度インパルス応答関数)を知覚閾値測定データよりモデルを用いて導出し,輝度単独の情報処理における時間特性を明らかにした。手法として2刺激光法を用い,刺激は空間的横グレーティングにGabor関数の包絡線をかけたものとし,特に空間周波数の影響についても検討した。 各実験データは,この手法,実験装置およびモデル解析が有効であり,輝度インパルス応答関数が導出できることを示した。実験結果は,興奮相と抑制相の交代で定義される応答速度は,単純Gabor関数〜0.5cpdの領域と5〜14cpdの領域でほぼ一定であり,2〜4cpdではほぼ3cpdをピークとしてそれらより高速な応答が得られることを明らかにした。また高空間周波数を用いた場合には,P(Parvocellular)経路の特性から考えて,抑制相が弱まり時間的足し会わせ時間が増大することが予測されたにもかかわらず,5〜14cpdの領域では,逆に単純Gabor関数〜0.5cpdの領域の場合と比べて,より早い応答が得られた。 以上より短時間輝度刺激呈示においては,2〜4cpdで構成される刺激を用いると,高速な視覚系の処理が期待できることが明らかになった。サインや警告表示などでの応用が期待される。
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