研究概要 |
本研究では、旋回クレーンの旋回運動や自動車のステアリング運動を包含する二つのクラスの非ホロノミック系に対する実用的な制御方法の開発を行った。多くの非線形制御研究では、一般的な非線形システムを対象にするため、必ずしも物理系特有の構造特性を考慮していない。しかし、応用の立場から考えると、物理系特有の性質を制御系設計に活用することによって、よりよい制御が期待できる。 具体的には,本研究では(1)対象となるシステムが消散系であり,(2)その非ホロノミンク拘束を仮想的に入力として捕らえると,それが常に定数ノルムを持つ、という二つの構造的特徴に着目した。そこで、(1)まず定数ノルムに拘束される仮想入力を設計し,(2)それからBackstepping法で実際の制御入力を設計する、という二段構えのアプローチを考案した。ステップ1において,消散系の蓄積関数をシステムのリアプノフ関数候補とし,仮想入力が拘束条件を満たす条件下でリアプノフ関数候補の微分を最小化するように仮想入力を決定した。系の消散性質のもとで、システムのクラスによっては、(1)大域的な漸近安定性、あるいは(2)有限時間整定性が保証される。さらに、ステップ2のBackstepping設計によって、全系を大域に漸近安定化する制御入力が求まった。提案された制御則はパラメータ変動に対してロバストなものである。旋回クレーンと車両に適用してシミュレーションした結果,きわめて優れた成果が得られた。 本研究の成果は,実用上クレーンシステムの大幅な効率向上と自動車などの操縦自動化に大きく寄与するものである。また、理論上においては、本研究の思想はいままでの非ホロノミック制御研究になかった、斬新なものであり、アプローチとしてもきわめて簡潔なものである。
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