簡素な相互作用を持つロボット群の振る舞いを非線形物理学の観点から捉え研究をおこなった。本研究の目的は群れることによる集団の効率を測ることである。そこで比較的簡単で普遍性の高い作業(分散物収集タスク)を想定し、その作業に対する群れの効率を測定した。なお、本研究は計算機によるシミュレーションとロボットによる実験の二本立てで行われた。本年度得られた結果は以下の通りである。 (1)収集場所が固定されている場合、餌の分布状況に応じて適当なロボット間相互作用・相互作用時間が存在することが明らかになった。特にフラクタル状の餌分布フィールドを用いることによって、ひとつのパラメータで餌の局在状況を表現することができ、そのフィールドにおける群れロボットの振る舞いを解析し、分布状態の次元と最適相互作用時間の関係を導いた。 (2)収集場所が固定されていない場合、Deneubourgのルールに従うことで餌は収集されるが、前項と同様の相互作用を導入し、群れが効率的に餌を収集できることを定量的に示した。 (3)餌場が巣から等間隔・等距離のところに数カ所、局在している場合、ロボット間の相互作用により餌場が時計回り、もしくは反時計回りに処理される現象が生じることを発見した。各ロボットは餌場の分布状況が未知のまま、相互作用のみによって資源を運んでいるにも関わらず、フィールド全体で捉えると、ある種の空間構造を形成していることになる。これはもっとも単純な創発システムの1つといえる。 (4)相互作用を有するロボットと独立に作業するロボットからなる不均一マルチロボットシステムに探索収集タスクを与え、餌の分布状態の次元に応じた最適比率があることを示した。
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