研究概要 |
柔軟マニピュレータなどの非最小位相系の高速かつ正確な追従制御は,近年提案された安定逆計算の手法によって実現できることが知られていたが,その使いやすい数値計算法は十分研究されていなかった.研究代表者がこれまでに安定逆計算とは独立に研究していた非因果的な反復法を,その数値計算法として発展させる研究を行い,以下の知見を得た. 1.追従制御の問題を無限時間区間の最適制御問題として定式化し,これに勾配法にもとづいた非因果的な反復法を適用すれば,安定逆計算の手法によって得られる解と同じものが得られることを理論的に示した. 2.制御対象に不確かさがある場合について提案した反復法の収束条件を明らかにし,この反復法を学習制御則として用いた場合の収束性を示した. 3.収束条件を周波数領域で考察し,制御対象の未知部分のナイキスト軌跡が右半平面にあることに帰着されることを示した.また,この条件を制御対象の不確かさがパラメータの存在区間としてあらわされる場合について考察し,16個のナイキスト軌跡が右半平面にあることによって確かめられることを示した. 4.提案した反復法を実際に用いる場合は時間区間を有限に打ち切る必要があるが,打ち切る時間区間の長さと制御誤差の関係を明らかにした. 5.提案した反復法をある種の非線形システムに適用した場合に,安定逆計算の手法によって得られる解と同じものが得られることを数値計算によって明らかにした.また,制御対象に不確かさがある場合にも適用可能であることを数値計算によって明らかにした.
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