研究概要 |
本年度の研究実績は以下のとおり. ・遺伝アルゴリズムを用いたMini-Max最適化によるロバストPID制御系設計の検証のため,温度制御プロセス実験装置を作成し,理論の有効性を検証した.実際の装置ではヒーター電流の制限があるために非線形な飽和特性を考慮しなければならず,アフィンパラメータ依存型の線形システムとしての取り扱いはできなかったが,本設計法では数値シミュレーションによって評価関数値さえ計算可能であれば様々なシステムに柔軟に対応できるため,非線形特性を考慮した設計をおこなうことができた. ・プロセス制御においてはそのモデリングが非常に重要であるが,平衡点近傍での線形近似モデルによらずとも未知なる平衡点への安定化が可能である遅延フィードバック制御の実プロセスへの適用可能性について検討した.同結果をまとめた論文を国際会議(ACC2001)にて発表した.また関連する結果を学術雑誌にて発表した.さらに同制御法をメカニカルシステムの周期運動のモーションコントロールに適用する際の安定性に関する基礎的検討をおこなった.同制御法を実用化するにあたり必要となる過渡特性の評価のために,特性方程式のむだ時間に関する根軌跡の効率的な数値計算方法を導いた.また差分ダイナミクスの有限次元近似の観点から設計する際に現れる,微分フィードバックH∞問題のLMIを用いた可解条件についてディスクリプタ表現を基にしたアプローチを示した. ・プロセス制御においては制御器の実装を含めた幅広い検討が要求される.有限語長で制御器を実装した際の丸め誤差等に対する閉ループ特性の劣化度合い,いわゆるfragilityの尺度としてのギャップ距離およびH∞ループ整形法の有効性を検討し,ロバスト特性を考慮した制御器の低次元化に関して考察した.
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