本研究は、非線形モデルに対して有効な、画像情報を利用した適応制御設計法の開発を目的として研究を行ってきた。非線型モデルには、二駆動移動型ロボットを使用した。今年度は、LPVモデルで構築した数学モデルを対象とした適応制御則に使用可能と考えられる、新たな適応調整則の安定解析を中心に研究を行い、以下の結果を得た。 ・ 一昨年から研究を進めてきた、変動するパラメータの内部モデルをパラメータ調整則の中に組み込み、変動を陽に考慮した新たなパラメータ調整則において、調整則への入力と閉ループ系の安定性との関係を解析的に解くことに成功した。この結果、設計段階で、安定性を考慮した設計が可能となった。さらに、設計した調整則の安定余裕を数量で見積もることを可能とした。 ・ 調整則のパラメータの決定法について、一つの指針を与えた。これにより2次の内部モデルのほかに、3次の内部モデルが設計でき、次数変化と制御性能の評価を数値で比較することができた。 本調整則は、移動体通信などで問題となっている、変動チャンネルに関するマルチパスの除去に使用する適応フィルタや適応同定則にも使用可能であることが、実験により確認された。また、最急降下アルゴリズムに基づいた設計法の他、繰り返し最小二乗法を用いた設計法にも拡張可能であることも明らかになり、シミュレーション実験にて有効性を確認した。 今後の研究の展開であるが、画像情報を一台の固定カメラから入手する構成で、複数の移動ロボットが変化する環境に対応が可能となるモデルを、LPV表現を利用して構築し、今年度解析、開発した調整則を利用した非線型適応制御設計を行っていく予定である。
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