本研究では、非線形系に対する新しい制御設計モデルとして注目されているLinear parameter varying(LPV)モデルに、画像情報を組み込んだ新しい適応制御設計およびそのコントロールパラメータの調整アルゴリズムを導出するための基礎研究を目的として行ってきた。今回の非線形モデルには二輪行動型ロボットを用いた。今年度は画像処理関連では物体認識のアルゴリズム開発を行い、実験により有効性を確認した。また可変コントローラのために必要となる時変パラメータを対象にした調整則の開発を引き続き行い、以下の結果を得た。 1)未知パラメータの変動を多項式近似により表し、この変動に関する内部モデルを組み込んだ新しい調整アルゴリズムの設計を提案した。昨年度はLMS型を対象とした手法であったが、今年度はRLSへ本手法を拡張した。 2)RLSアルゴリズムに関する入力信号と安定余裕との関係式を導出し、数値シミュレーションにて確認を行った。シミュレーション結果から、従来方法に比べ、変動率が速いパラメータに関して十分な精度が得られることが確認できた。またLMS型で導出した安定余裕との関係も明らかにした。 3)多項式近似によるパラメータ誤差が出力にどのような影響を与えるのかの解析解を導出し、シミュレーション結果との比較、検討を行い得られた結果の妥当性を検証した。 4)提案する調整則を到来方向推定(DOA)などのパラメータ推定アルゴリズムとして使用し、通信分野への有効性を数値シミュレーションで確認した。 今後の展開として、LPVモデルのような内部信号と相関がある場合への拡張および多項式以外の近似関数を使用した内部モデルの開発がある。
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