1.浸透流の熱力学的定式化 浸透流に対して線型および非線型な熱力学定式化を行い、解析的に局所流れ現を表現し、局所流れ発生の条件と発生後の進展方向を推定する手法の理論的根拠を示す試みを行った。本手法では塑性ひずみに対して流速を、応力に対して圧力を対応させることで浸透流の解析にも適用できるものと考えた。結果、単純な境界条件に対してはみずみちの予測可能性を示せた。しかし、複雑な境界条件に対しては本手法を適用することは困難と考えられ、本研究では複雑な境界条件に対し局所流れを解析しうる解析手法として、繰み込み群論を用いた解析手法を提案し、広範囲にわたる岩盤の透水性の評価を行った。本解析手法により、従来用いられていた並行平板を仮定した亀裂モデルでは、広範囲に及ぶ透水性を十分に評価し切れていない事が判明した。中でも地下処分施設から漏出する汚染物質が生態圏に及ぼす影響を評価する上で重要な指標となる水中の粒子の移行時間には、みずみちが形成する様々なクラスターのサイズが大きく影響を及ぼしていることが判明し、クラスター形成を考慮に入れた解析手法の必要性が示せた。 2.三軸載荷条件における浸透流実験 解析とは平行して人工軟岩及び亀裂性岩盤に対し三軸載荷状態で浸透流試験を行た。その結果境界条件、特に拘束圧や偏差応力に対する流速の依存性、また流速に対する降伏曲面の依存性が評価できた。この結果を利用し、亀裂性岩盤に対しては様々な形状の亀裂に対しその透水性を再現しうる解析手法を提案し、実験との比較よりその妥当性が示された。今後は実地盤内の亀裂表面形状に起因する、様々な応力下での透水特性の変化を的確に表記しうるパラメータを抽出する予定である。
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