1)超音波パルス伝播速度は、FRP層表層への適用が可能である。対称法を用いた場合、FRP層の材料の違いが伝播速度の差に現れる傾向がある。表面法では、FRP層は伝播速度を低下させる傾向がある。なお、90サイクルまでの凍結融解繰返し作用による劣化は判別できなかった。 2)表面法による超音波パルス伝播速度は、その低下による曲げひび割れの発生の検知に優れている。最も顕著にひび割れの影響が現れるのは中心間距離100mmだが、ひび割れを判別可能な伝播速度の低下を約20%の低下と考えると、中心間距離が200mmなら十分判別可能であり、中心間距離100mm・200mmによる表面法が適しているといえよう。 3)共鳴振動法による相対動弾性係数は、特にたわみ振動を与えた場合、FRP層の材料の違いを検知しやすい。なお、90サイクルまでの凍結融解繰返し作用による劣化は判別できなかった。 4)超音波パルス伝播速度と相対動弾性係数に特に低下は認められない場合でも、引張型付着試験や曲げ試験で付着強度や曲げひび割れ発生荷重などに有意な低下が確認された。これらの非破壊試験結果に変化が見られない場合でも、コンクリートやFRP層の劣化が進行している可能性があることを考慮しなければならない。伝播速度と相対動弾性係数のそれぞれに検出可能・不可能な現象があり、また適用精度にも限界があるため、連続繊維シートで補強したコンクリートの維持管理には数種の検査を併せて行うことが望ましい。 5)引張型付着試験は、90サイクルまでの凍結融解繰返し作用によるコンクリートの劣化を判別した。柔軟タイプの樹脂を用いた場合は、膨張拘束力が弱いため劣化が顕著であったと考えられる。
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