研究概要 |
東北地方におけるコンクリート構造物は、その気候的な条件により、ひび割れの発生、スケーリングやポップアウトに代表されるような寒冷地特有の凍害劣化を受けやすい環境にある。コンクリートの凍害を考える場合、コンクリートを構成するセメント、骨材、混和材料などの個々の材料品質と、セメントマトリックス中に骨材が分散した状態、すなわち複合材料として捉えることが重要である。特に、その中でコンクリート中に7割を占める骨材の影響は大きいと考えられる。しかし、近年、良質骨材の枯渇化や採取規制などの制約が年々厳しさを増しており、地域によっては良質骨材の入手が非常に困難な状況になってきている。そこで本研究課題は、コンクリートの耐凍害性と粗骨材品質特性との関連を明らかにするとともに、凍害危険性を判断するための骨材品質の指標値を再検討することを目的としたものである。本年度は、(1)細孔構造特性に着目した粗骨材品質の評価、(2)コンクリートの耐凍害性に及ぼす粗骨材品質の影響の評価、について実施した。得られた結果の概要を以下に述べる。 1.粗骨材単身での凍結融解試験を行い、粗骨材自身の凍結融解抵抗性と基本的品質との関係について検討を行った。そして、粗骨材自身の凍結融解抵抗性は排水性(透水性)を反映する中央細孔直径と極めて高い相関性を持つことを明らかにした。 2.コンクリートの耐凍害性は,粗骨材の細孔構造が大きな役割を果たしていることが分かった。 3.従来から用いられている粗骨材品質の指標値である密度や吸水率、安定性のみでは、コンクリートの凍害危険度(凍結融解抵抗性、スケーリング抵抗性)を十分に予測できないケースがあることが分かった。 4.コンクリートの凍結融解抵抗性は、特に粗骨材中の凍結水量を反映する全細孔容積や、粗骨材自身の凍結融解抵抗性と関わりを持つ中央細孔直径と相関性が高いことが分かった。また、コンクリートのスケーリング抵抗性は、粗骨材の熱膨張係数と大きな関連を持つことが分かった。 5.粗骨材の細孔構造特性に着目し、全細孔容積と中央細孔直径を指標としてコンクリートの凍害劣化メカニズム(形態)を5つの区分に分類した。 6.コンクリートの凍害劣化機構に立脚した粗骨材の品質指標値や品質の評価方法を検討する必要があることが分かった。
|