研究概要 |
本研究は,断層近傍で生じる地震動および表層地盤の変形について,その発生・伝播過程の解明,大きさや量の予測,そしてそれらが構造物へ与える影響の評価を,断層上の動的破壊過程を考慮した上で行うことを目的とし,本年度は以下のような研究を行った. 1.表層地盤の変形に関する模型実験と数値シミュレーション 砂を用いた断層模型実験を行った.逆断層の場合,ジョイント要素を用いた弾塑性有限要素数値解析によって比較的良好に実験結果をシミュレートできることを示した.また,横ずれ断層に関して,基盤のすべりに伴って生じる地盤内のせん断破壊面は,基盤付近では断層に沿うように発生するのに対し,地表に近づくにつれて基盤断層と高角に交わるように発達していく過程を明らかにした.さらに基盤の変位速度を変えて実験を行い,乾燥砂においては,せん断破壊面形状の変位速度への依存性は小さいことを示した. 2.断層上の動的破壊過程の推定 観測された地震波形から直接,断層上の動力学的破壊モデルパラメタを推定する手法を開発した.単純なモデルを用いた数値解析を行い,断層に沿うように分布している観測点で信頼性の高い記録が得られるなどの好条件下においては,本手法によって応力降下量・破壊時刻が正しく推定されることを示した. 3.地震動解析 震源断層上での動的な破壊過程と表層付近の細かな地下構造を共に考慮可能な地震動解析手法を開発した.1948年福井地震に関して,これまでに明らかにされている震源の破壊過程と地下構造に基づいて本手法により解析した結果,震源のアスペリティー領域の破壊によって大きな地震動が生じ,さらに伝播の際に沖積平野部によって震動が増幅される様子を明らかにした.
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