研究概要 |
今年度はゴムと鋼板からなるトンネル中柱の免震装置の最適形状について,数値解析によって検討を行った.まず,最も簡単でかつ鋼板に応力集中が起こりにくい形状として,装置側面の鋼板に円弧形状を設定して,免震装置の形状最適化を図ることにした.形状最適化にあたっては,円弧状側面鋼板の窪み量を免震装置形状を決定する設計変数として考慮し,鉛直方向剛性を大きく,回転剛性を小さくする目的関数の最小化を図ることになるが,その際,装置側面の鋼板が降伏しないよう配慮する必要がある.そこで形状最適化を行なう前に,装置に上載荷重が載荷した際の鋼板の応力状態について検討した.検討にあたっては,側面鋼板の厚さを5,10,15mmの3種類設定し,降伏ひずみを0.2%とした上で軸方向力を載荷した.その結果,鋼板が5mmの場合には1,000(tf)程度の荷重が載荷すると鋼板が降伏に至る場合があり,その場合鋼板降伏後の耐荷能力は著しく低下することが明らかになった.そこで鋼板の厚さを一定とした上で,鋼板の窪み量を変化させた場合の上載荷重耐荷能力を検討した結果,鋼板が最も降伏に至りにくい,すなわち免震装置が最も線形性を保持することの可能な形状が存在することがわかった.装置側面の初期形状が円弧の場合には,この装置の線形領域を最大にする形状が概ね,鉛直方向剛性を大きく,回転剛性を小さくするような最適形状にもなっていることがわかった.このことは,ゴム材と鋼板の荷重分担率が最適に近い値になっているものと思われる. その後,免震装置の側面形状をフーリエ級数で表現し鉛直および回転に対する剛性の値を検討した.その結果,鋼板形状を円弧に設定した場合と比べ応力集中が顕著であること,また側面形状を滑らかにするためには,装置鉛直方向について相当に細かくメッシュ分割を行う必要があり,そのために多大な計算時間を強いられることが明らかになった.
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