本年度はまず、東アジアの梅雨前線の活動とその年々変動を全球気候モデルを用いて再現し、特に1998年の長江流域の大雨を再現することを目指し、全球気候モデルのセットアップを行った。まず、1998年の特徴的な海面水温データをNCEP(アメリカ気象局)より取得し気候モデルの形式に変換した。次に、気候モデルを所属研究室のワークステーションおよび東大大型計算機センターの両方で利用可能であるように展開・セットアップを行った。 東アジアモンスーンの雨季の年々変動はユーラシア大陸の陸面水文状態と強い関連が想像されていながら、多くのことがいまだ未解明である。そのため、次に、ユーラシア大陸の水文状態と東アジア降水の年々変動との関係を明確にするための数値実験を行った。 しかしながら、現段階では明確な関係は見出せなかった。その原因の一つが、現在利用している気候モデルの陸面過程が簡単なものであると考え、複雑な陸面植物過程を陽に組み込んだSiB2というモデルを全球気候モデルと結合した。来年度は、この結合モデルを用いて研究を進める。 また気候モデルで計算された水文量を河川流出量として解釈し、洪水を再現するために、気候モデルと結合可能な形式をもった大陸スケール水文モデルの第一バージョンを開発した。これによる河川流量算定値と観測値の比較を行い、良好な関係を確認した。 長江大洪水は流域から排出される土砂による河底の上昇と関係が深いともされている。そのため、全地球を0.5度で区切り、アメリカ農業省により開発された土壌侵食モデル(RUSLE)を適用することによって、土壌浸食量の全球分布の算定を行った。
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