研究概要 |
降雨時の水蒸気動態を主としてGPS,マルチパラメータレーダー,メソ気象モデル,雲解像数値モデルによって解析した. ・X-BAIU98の解析1998年梅雨期に長崎県橘湾周辺で行われた降雨観測実験データのうち,GPS,2重偏波レーダー,雲解像モデルを用いて主として小規模水蒸気擾乱について考察した.その結果,小さなスケールの線状エコーのような水蒸気のコントラストが比較的明確な対流性降雨の場合には,雲解像モデルの出力結果とGPS位相残差データはよい対応関係を示し,その変動量は大気遅延量で10〜20mm/10分程度であることが示された. ・X-BAIU99の解析1999年梅雨期に鹿児島県甑島列島で行われた降雨観測実験データのうち,GPS,簡易レーダー,雲解像モデルを用いて主として小規模水蒸気擾乱について考察した.その結果,X-BAIU98の解析で得られたのと同様に,メソγスケールの線状エコーがGPS位相残差に対して与えている影響を確認することができた. ・琵琶湖における解析1998,1999年に琵琶湖周辺で生起した局地豪雨現象をGPS,3次元レーダー,メソ気象モデル,雲解像モデルを用いて,主として降雨生起後の移流方向について考察した.そこでは,GPS可降水量の絶対値が少ないときでは,雨域の移動は下層の可降水量収束方向に進むこと,可降水量の絶対値が大きいときでは,雨域の移動方向は可降水量の収束方向に依存しないこと,メソγスケールの水蒸気変動をシミュレーションによって捉えるためには,モデルの水平スケールを1km以下にしなくてはならないことが示された.
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