研究概要 |
本研究で得られた成果をまとめると,以下の通りである. 1)北川縦断方向水理・水質調査を実施した.実施には,2隻の調査船による移動測定によった.流速分布は,潮汐に応じた流れの変化を呈し,塩分分布と合わせて考えると,特に水層が淡水と海水により成層化されるような状況下では,二層流的特徴が現れている.また,昨年度に調査した塩分等濃度線図の結果と比べ,塩水楔の侵入長にやや変化が見られた.河口部で部分的に行われている河川拡幅工事などの影響も無視できないが,数値計算などによる検証が必要である. 2)北川河口から3.75km,5.75km両地点におけるカワスナガニの生息密度は昨年度の調査結果と比較すると,3.75km地点で生息数自身減少しており,3.75km付近下流部での大規模な河岸掘削工事の影響ではないかと思われる. 3)カワスナガニの現地横断方向分布とそこでの水質調査から,3つの環境因子(塩分,河床材料,水位)に関しての選好曲線を求めた.ただし,ここで用いた環境因子間の影響は無視しており,選好曲線の一般化にはこれらを排除した室内実験が別途必要である. 4)室内実験水槽によるカワスナガニの選好性について検討した.塩分に関しては,0〜30psu内を幅広く活動するものの,体液浸透調節機能の働きなども検討する必要がある.また,水位に関しては,平均水位以下が彼らの活動領域である.さらに,河床材料に関しては,中礫の存在が彼らの隠れ場や餌場といった点から非常に重要な因子となっている.
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