研究概要 |
本年度は以下の2点について重点的に取り組んだ.第一は,独立採算型のPFI事業を念頭において,政府が依頼人として料金と利用者の効用についてのスキームを提示して,そのもとで代理人である民間事業者が事業を行う場合の事業の成立可能性について分析した.第二に,他の事業方式も含めた様々な方式において,便益帰着分析のフレームで公的支援の範囲と妥当性について検討した. 事業成立可能性についての分析では,事業を取り巻く経済環境について好条件時と悪条件時が確率的に生起するものとし,そのもとで民間事業者が出資および融資により資金を調達可能であることを成立可能とした.事業の収益性が民間事業者と政府が合意する料金スキームに依存し,かつ,リスクを伴うことを明示した応用ミクロ経済モデルを作成して解析的な比較静学分析と数値実験により分析した. 公的支援の分析では,各事業方式のもとでの社会的便益を便益帰着構成表で表現し,民間事業者の採算性と社会的効率性の両面についての制約のもとで実行可能な公的支援の上限を検討した.ただし,今回の静学のフレームでは民間事業者がオプションを持つ場合の便益帰着などを扱えないため,知見は非常に限定的であることがわかり,この点について来年度取り組むべきことが明らかになった.
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