研究概要 |
宅地供給を目的とする新市街地型の区画整理事業地区内において,地主による土地の留保,商業系や業務系の建物の無秩序な立地といった要因により,当初の土地利用計画と乖離した立地状況が生じている.そのため,土地区画整理事業の本来の目的が阻害され,良好な住環境の形成が妨げられている.地区計画策定時にあらかじめ立地シミュレーションにより計画の評価が可能になるならば,このような状況を避けることは可能となるだろう. そこで,本研究では,熊本市南部第一土地区画整理地区を分析対象地区として,各用途の立地行動をミクロに表現する立地モデルを構築し,立地シミュレーションを行った. 地区内を20m×20mのメッシュ(全2,889メッシュ)に分割し,1981年から1998年までの18年間について各メッシュ毎に立地点固有の位置特性や新規立地した建物のデータをデータベース化した.そのデータベースを用いてランダム付値地代理論に基づいた区画整理地地区内ミクロ立地モデルを推定した.その際,立地点周囲の土地利用を考慮した空間相互作用項を導入した.以下,推定されたミクロ立地モデルから把握された地区特性である. (1)都心までのバス経路距離がより近いところに住居系が,遠いところに商業・業務系が立地しやすい. (2)住居系商業系用途とも駅により近いところに立地しやすい. (3)集散街路から遠いところに住居系が,近いところに商業・業務系が立地しやすい. (4)前面道路の道幅が狭いところに住居系が,広いところに商業・業務系が立地しやすい. (5)ガスの基盤整備が成されている土地に両用途ともに立地しやすい. (6)住居系どうしでは集積選好性があるものの,商業・業務系の立地では集積性はさほど関係がない. さらに,1992〜98年間についてミクロ立地モデルを対象地区に適用したシミュレーションでは,住居系では地区内北部及び西部で,また商業・業務系では集散街路沿いでそれぞれ高い現況再現性を示した.
|