視覚障害者が単独で移動をすることは非常に困難で危険を伴う。特に道路横断では道路渡り口の検出、横断可能のタイミング認知、横断方向の定位、限られた時間内での歩行など視覚以外で正確な状況判断をするには何らかの手がかりを要するタスクが多く、視覚障害者が心理的ストレスを大きく感じていることの一つである。中でも横断方向の同定、正確な歩行については現存する障害者支援システムでのサポートには限界がある。音響信号機は横断のタイミングを知るのには有効であるが、歩行方向の定位に用いるためには環境などの外的要因の制約を受ける。視覚障害者誘導用点字タイルは車両や付近住民への配慮から横断歩道には敷設できず、横断中のサポートには利用できない。そこで視覚障害者の単独歩行を支援する目的で、手指を用いた触覚的な手がかりが方向定位にどの程度貢献するかを検討した。 初年度は触覚的手がかりの最適形状を決定する基礎資料を得るために、突起(溝)の高さ、幅、長さなどの形状を変数として、主観的評価法を用いて最適モデルを構築した。今年度は最適モデルを用いて実際に方向低位や歩行を行い、触覚的手がかりの有効性を確認し、点字タイル、音響信号機などの現存する支援システムとの相互作用についても検討した。その結果、手がかりを持たずに歩行するときよりも触覚的手がかりを用いた歩行の方が偏軌の出現が遅れる傾向にあり、道路横断開始時に視覚障害横断者へ的確な情報を提供しうることが示された。また、音響信号機と併用することによってより長い距離の歩行も可能であることが示唆された。
|