本年度は、有機物濃度の高い水道水源(江別市千歳川表流水)および都市下水高度処理水、独立栄養性細菌の放出する細胞外代謝産物を研究対象として、三次元励起・蛍光スペクトル、XAD樹脂を用いた溶存有機物のキャラクタリゼーションを行った。三次元励起・蛍光スペクトル(EEMs)を導入することにより、フミン質と総称される有機物群を三ないし四グループに分割して考察することが可能であることが示された。千歳川表流水と、都市下水高度処理水中に含まれる有機物群は、EEMsを用いた分析より、明らかに異なる物質群から構成されていることが分かった。したがって、両者に同じタイプの膜を適用することが各々のケースにおいて最良の膜選択である可能性は低い。また、フミン質と総称される有機物群と、細胞外代謝産物は、EEMsにより明確に分離された。本年度にEEMsで特徴づけた代謝産物は、膜閉塞を引き起こさない有機物であると考えられた。EEMsと、XAD樹脂を用いた有機物の分画を組み合わせて検討することで、溶存有機物の性質等についてさらに深い情報を得ることが期待されたが、本研究で対象とした水のXAD樹脂による分画における回収率を高くすることができなかった。千歳川表流水をろ過原水として長期間行った膜ろ過実験装置において、膜閉塞を引き起こしたフミン質をアルカリ抽出し、EEMsによって原水に含まれるフミン質との比較を行った。この結果、原水に含まれるフミン質中特定の画分が膜閉塞に優先的に関わっている可能性が示唆された。
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