研究概要 |
病原微生物に感染した人間や家畜は,新たな微生物排出源となる。したがって,流域の水系感染症のリスクを最小化するためには,感染症流行地域からの下水や畜産排水に起因する流域の水利用を介した感染症の伝播も考慮に入れる必要がある。本研究では,地理情報システム(GIS)を利用して,流域の人口動勢や土地利用等の情報を取り入れた水系感染症の伝播予測モデルを開発すること目的としている。最終的には,ここで開発されたモデルを利用して,現状および将来の当該流域における感染症流行伝播に対する危険度(リスク)を比較評価することを目指す。 本研究では,河川上流から河口まで流域に多数の都市が立地し,感染症流行の可能性が考えられる阿武隈川流域を対象フィールドに選定した。本年度は,この阿武隈川流域について,人口密度や年齢構成等の人口動勢の統計データ,流域の土地利用や各種処理場の配置といった地理情報に関する基礎資料の収集を行い,感染症伝播モデルの開発に必要なGISデータを整備した。これらのデータを利用して現在,感染症伝播モデルを「流域の水収支モデル」「病原微生物感染者による下水汚染モデル」「感染家畜および汚染コンポストによる水系汚染モデル」「汚染された水道水摂取による感染モデル」という4つのサブモデルに分けて,それぞれモデル開発を行っている。来年度は,これらのサブモデルの開発を進め,最終的には,感染症伝播モデルを利用した当該流域における感染症伝播の危険性評価を行う予定である。
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