平成12年度は、おもにポリオウイルスワクチン株を用いて、水中からのウイルス回収率をプラック法により定量した。陰電荷膜吸着・酸洗浄・アルカリ誘出法は、純水にMgイオンを加えた試料からのウイルス濃縮に関してはこれまでに高い回収率が得られることを確認していたが、今年は海水に対して適用した。その結果、陽イオンを添加しなくてもウイルスが陰電荷膜に効率よく吸着すること、酸洗浄によるウイルス回収率向上効果が非常に大きいこと、得られるウイルス回収率が非常に高いことがわかった。結果として、2Lの海水を10mlに濃縮し、ウイルスを80%以上回収している。この回収率は、既存のウイルス濃縮法と比べて例外的に高い回収率である。 さらに、既存のウイルス濃縮法とは異なり、この手法を用いて得られたウイルス濃縮液は、溶存有機物をほとんど含まない状態で回収される。その利点を生かし、ウイルスの再濃縮を限外濾過膜を用いて行なうことを試みた。遠心分離の方向とろ過の方向が逆向きになるCentriPrep50(Amicon)を用いることにより、70%以上の回収率で、最終液量を1ml以下にする方法を開発した。1ml以下であれば、ウイルスの遺伝子を抽出する液量として適当であるので、これ以上の濃縮は必要ない。 ここで開発した濃縮法により、2Lの海水を1ml以下に濃縮し、60%以上のウイルスを回収することが可能となった。ウイルス濃縮法は、濃縮後にPCRを用いてウイルスを検出することを考えれば、簡便に再濃縮できることは非常に大きい魅力であるといえる。
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