高温接触酸化処理法の運転条件の中で担体含水率を取り上げ、担体含水率と微生物群集構造、有機物分解能力との関係を明らかにすることにより、安定運転のための制御因子を明らかにすることが本研究の目的である。 本年度は、高温接触酸化処理法において出現しうる微生物種の絞り込み、および本処理法で重要な役割を果たす可能性のある微生物種の推定を行った。実験室規模の高温接触酸化処理法リアクターを、担体には木片を用いて運転した。このリアクターの運転状況については、有機物の分解活性として排気ガス中のCO_2濃度を測定し、定期的にリアクター内の担体をサンプリングし、担体の含水率を測定した。また、サンプリング間のデータを補完するため、リアクター重量を測定して含水率の計算も行った。 食用油中心の基質を投与して運転したところ、12日目以降30日目まで分解率9割の運転を行うことができた。その後は分解率が徐々に低下した。 群特異的プローブを用いたFISHおよびキノンプロファイル法を用いて微生物群集構造の全体像を解析したところ、運転初期、すなわち中温条件下ではプロテオバクテリアβ群が、後期の高温条件下ではグラム陽性低GC群が優占していることがわかった。さらに、種レベルでの群集構造の変化をPCR-DGGE法を用いて調べたところ、運転前期から後期にかけては群集構造が大きく変化していることが確認できたものの、後期の間ではあまり変化がないことがわかった。この間、担体含水率は20%から50%まで大きく変化していることから、含水率は群集構造に影響を与えなかったことになる。これは、以前行った予備実験の結果に反するようであるが、一度群集が構成された後では、含水率が変化しても群集構造は変化しない、ということを示唆しているともいえる。来年度さらなる検討が必要となっている。
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