研究概要 |
前年度、群特異的プローブを用いたFISHおよびキノンプロファイル法を用いて微生物群集構造の全体像を解析した。本年度においては、PCR-DGGE法、種特異的プローブを用いたFISHを併せて用い、高温接触酸化処理法において出現しうる微生物種の絞り込み、および本処理法で重要な役割を果たす可能性のある微生物種の推定を行った。なお当初、担体として吸水性高分子ポリマーを用いて運転する予定としていたが、運転の便宜を考え従来通り木片を担体として用いた。実験室規模の高温接触酸化処理法リアクターを運転し、有機物の分解活性と微生物群集構造を調べた。 ペプトンおよびデンプンを基質にもちいた場合、定常運転を行っているときにはBacillus firmus, B.thermocloacae及びその類縁種などが優占的に検出された。さらに、以下のような処理の機構が考えられた。基質が投入されると、中温性細菌であるB.firmusなどにより、スクロース・ペプトンを用いた呼吸、デンプンの加水分解及び加水分解産物のグルコースを用いた呼吸が行われ、CO_2が発生し温度も上昇する。温度が50℃付近まで達すると、中温性細菌の代謝が止まる代わりに、B.thermocloacaeなどの好熱性細菌は活発に代謝が行えるようになり、温度も60℃近くまで上昇する。B.thermocloacaeは中温性細菌による加水分解産物であるグルコースや、中温性細菌が使い残した低分子の有機物を基質にして増殖を行う。利用可能な有機物が枯渇してくると、代謝活性が弱まって温度が低下する。また、食用油を基質に用いた運転においても、定常運転時にB.thermocloacaeが優占的に検出されたことから、B.thermocloacaeが安定運転のカギを握る重要な微生物種であることが明らかとなった。これらの微生物を安定的に系内に保持することが、安定運転を行う上で効果的であることがわかった。
|