研究概要 |
本研究では、農薬の好気的・嫌気的条件下における微生物分解実験を行い、経時的に試料の変異原性をAmes試験により調べた。以下に、本研究で得られた知見を列挙する。 (1)除草剤CNPは好気的に微生物分解されたが、フレームシフト検出株であるTA98,YG1021,YG1024株に対する間接変異原性は増加した。この増加は、CNPの微生物分解代謝物に起因していると推測された。既に報告されているCNPの代謝物の中であるdesnitro-CNPが寄与しているのではと想像された。 (2)除草剤CNPは嫌気的に微生物分解されたが、YG1024,YG1029,YG1041,YG1042株に対する間接変異原性が著しく増加した。この増加には、変異原性を有する代謝物として既に報告のあるCNP-aminoが寄与していたが、それ以外の未知代謝物の寄与も無視し得ないほど大きかった。CNP-nitrosoがこのような未知代謝物の候補として挙げられた。 (3)殺虫剤MEPは好気的に分解され、分解に伴い直接・間接のいずれの変異原性も増加することはなかった。 (4)殺虫剤MEPは嫌気的に微生物分解されたが、YG1029,YG1042株に対する間接変異原生が大きく増加した。この増加には、変異原生を有する代謝物として既に報告のあるMEP-aminoが寄与していたが、それ以外の未知代謝物の寄与も無視し得ないほど大きかった。この未知代謝物は、aminoarene類であろうと推定された。 本研究より、農薬は特に嫌気下での微生物分解により毒性の高い代謝物へと変換される可能性が示唆された。しかし、ある化学物質の環境中での分解代謝物を全て把握することは難しく、それら全ての代謝物の毒性試験を行うことは極めて困難である。従って、ある化学物質の環境中での毒性の変動を議論する際には、本研究で取り上げたAmes試験に代表されるバイオアッセイを用いて、系全体を総括的に評価する必要があると提言できる。
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