研究概要 |
従来の交通政策の目標は生活質の向上(より速く、安く財や人が移動できる、居住地、移動先、出発時間を自由に選択できる)であった。これは環境容量が無限であるという仮定での目標であり、容量の存在が認識された現在、「持続可能性」と生活質の向上の調和を図ることが求められている。本研究は、環境負荷削減のための政策として、自動車の取得・保有・使用に関連する税について税率及び税収の使途の変更を取り上げ、世帯の乗用車の保有・使用行動について政策分析を試みるものである。 本年度は,自動車関連税制を議論する上での枠組みの整理と,自動車の保有、使用(移動距離)、移動速度、燃費、技術開発にかんする既存研究のレビューを中心に行った。課税とその使途,自動車の保有と使用,自動車単体の技術開発,社会資本整備,およびそれらの間での相互依存関係をすべて考慮した上でモデル化したものはこれまでないことを明らかにした.これを踏まえて,本研究では,世帯の行動の定式化を行った。その際、例えば、移動速度が上昇し、予算や時間に余裕が生じれば、新たな交通行動(トリップ数やトリップ長の増加)を行うという行動原理、さらに世帯の行動の結果から決定される社会の状態が再度世帯の行動に影響を与えるといったフィードバック、すなわち均衡概念を明示していることが特徴である。保有台数、車種・車令、使用量に関する選択行動を表現することができた. 来年度は,自動車メーカーの行動の定式化と,パラメータのキャリブレーションを行ったうえで,税制変更のシミュレーションを行いたいと考えている.
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