地震波伝播経路の計算のため、北海道周辺のプレートの沈み込み形状を、3次元の2層構造(プレート(減衰小)とその上面から地表まで(減衰大))としてこれを大まかな減衰構造にモデル化した。モデル化は、既往の研究を基に数値情報として入力した。経路を計算機上で求めるために、スネルの法則に基づくレイトレーシングアルゴリズムを持つプログラムを開発した。用いたデータは、1982年浦河沖地震、1987年日高山脈北部地震、1993年釧路沖地震、1993年北海道南西沖地震、1994年北海道東方沖地震、1994年三陸はるか沖地震の6被害地震のアンケート震度データを最大地表速度・最大地表加速度等に変換したものである。観測点は北海道内全市町村に対応する212地点である。伝播経路と震度との関係を導出するため、開発したプログラムを用い、モデルを基に震源から観測点への主要な地震動の伝播経路を求めた。次にそれぞれの地震において、伝播経路の減衰大および小の区間長さを説明変数、地震動強さを目的変数として、関係式を回帰分析により求めた。求められた関係式はおおよそ基盤における地震動分布予測式と考えてよい。ここで求められた回帰式をさらに地震規模により分類し、その係数を地震規模により回帰した。また、減衰構造によりモデル化することで、この回帰係数は向上していることが確認できた。これにより、地震規模を変数とする任意の地震に対する予測式が構成されたことになる。ここまでで明らかになった予測式と観測値の差を、国土数値情報等の地形地質のデータと結びつけ、表層地盤による増幅特性を議論し、既往の研究を参考にしながら、補正項を導出した。それにより、精度の高い予測式が構成された。
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