研究概要 |
これまでに本研究テーマに関して「ファジィ理論を用いた満足度指定設計」の考え方を提示するとともに,「せん断型一次固有周期制約条件下のファジィ閉形解」の提示をも行って来た。この考え方を基に,本年度は梁と柱で構成された建築ラーメンを対象とした「保有水平耐力を指標とした満足度指定設計法」を提示した. 建築骨組の設計時に採用する制約条件については,設計者がその時々に決定するため,いろいろな条件下での満足度指定設計法の誘導が今後必要である.ここでは,設計問題の定式化と設計解の誘導が容易な,線形計画問題として取り扱える「保有水平耐力を指標とした満足度指定設計法」をまず提示する.これは,梁や柱などの個々の部材レベルでの寸法までをも直接的に求める設計法の展開の基礎理論となる.低層の建築構造物の必要保有水平耐力を指定した骨組部材を容易に見い出すことができれば,これを初期設計に他の制約条件も満足する骨組を設計するという有用な使い方もできる. 梁と柱で構成された平面建築骨組を対象として,保有水平耐力と構造重量の満足度を制約した満足度指定設計問題の定式化を行った.この定式化は,ファジィ理論のメンバシッブ関数の考え方を利用した定式化で,ファジィ最適設計問題と見なすこともできる.この設計問題では,部材(設計変数)ごとに独立な断面性能(全塑性モーメント)の可能領域を求めることになる.すなわち,部材ごとに断面性能の上限値と下限値の中に入る断面性能を一個づつ選定すれば,指定した満足度以上の骨組が設計できる. この最適設計問題の解を求める手法として,それに直接対応するクリスプな設計問題の解を利用して元問題であるファジィ最適設計問題の解を求める方法を提示した.これにより,満足度が指定値以上となる骨組の設計解(部材全塑性モーメント)の上限値と下限値を陽な閉形表現で求めた.
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