研究概要 |
石炭火力発電所で発生する石炭灰の品質は,微粉炭燃焼炉の性質やその燃焼条件ならびに燃焼炭の種類などにより,大きく変動する。特に遊離石灰を多く含有する石炭灰を使用するとコンクリートに顕著な膨張ひび割れ並びに強度低下が生じる。このことは石炭灰をコンクリートに大量有効利用する際の大きな障害となる。本研究は,この遊離石灰を多く含む石炭灰を大量使用したコンクリートにおいて,遊離石灰が硬化コンクリートに及ぼす影響の定量的把握とその対策方法の確立を目的として行ったものである。 本年度に行った検討項目と,その成果を以下に示す。 1-1炭種の異なる石炭灰の化学成分の分析 ・粉末X線回折及び示差熱分析による石炭灰中の化合物の定量分析を行い,燃焼炭の異なる種々の石炭灰の遊離石灰含有量を定量した。その結果,石炭灰によっては7%にも達する含有率を示すものが存在することが明らかとなった。 1-2上記石炭灰を使用したコンクリートの初期から長期材齢にわたる性状の測定 ・上記石炭灰を使用したコンクリートの,質量変化,膨張,強度低下等と,遊離石炭灰含有量の関係を測定した。その結果,コンクリート1m^3あたり約10kg/m^3以上の遊離石灰が含有された場合に,その消化反応に伴って,初期材齢からコンクリートに膨張ひび割れならびに強度低下が生じ,含有量が大きくなるほど顕著となることを定量的に明らかにした。したがって,この値が遊離石灰の安定化処理の目標値となる。
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