研究概要 |
アルミニウム合金板を挿入した高力ボルト摩擦すべり接合単体要素試験体の動的載荷実験を実施した結果,次の知見が得られた。 1.添え板厚さの影響 添え板厚さを増加させた,すなわち,ボルト締付け長さを拡大し(ボルト軸剛性は減少),摩擦面の見掛けの接触面積を拡大した試験体では,摺動中のボルト軸力の低下が抑制される傾向が観察された。一方,添え板厚さの増加による摺動中の摩擦係数の大きさ及び変化特性に対する影響は,概ね観察されなかった。 2.挿入アルミニウム合金板の材質の影響 摺動中の摩擦係数の大きさと挿入アルミニウム合金板の引張強さの関係として,負の相関が表れた。すなわち,挿入板の強度が大きい試験体では摩擦係数が小さく,挿入板の強度が小さい試験体では摩擦係数が大きくなる傾向が観察された。一方,添え板厚さが小さい場合については,挿入板の引張強さが小さい試験体のボルト軸力の低下量は,大きくなる傾向が示された。 3.初期導入ボルト軸力の影響 本実験の範囲では,初期導入ボルト軸力と摺動中の摩擦係数の大きさには,明確な相関は観察されなかった。また,摺動中のボルト軸力の低下量に対する初期導入ボルト軸力の大きさの影響も,概ね観察されなかった。 4.まとめ 本実験の範囲において,高強度アルミニウム合金板を挿入し,かつ添え板厚さを増加させた高力ボルト摩擦すべり接合では,比較的安定した摩擦力を保持し摺動する性状が得られた。また,その摩擦力は,初期導入ボルト軸力と本実験より得られたすべり係数を用いて評価できる可能性が示された。
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