本研究は、建築構造用コンクリートに使用する高品質再生骨材を製造する過程で発生するセメント系微粉末に対し、適切な改質処理を施し、水和性の回復を図ることで、水硬性を有する新しい建築材料としての実用化を目的とした。なお当該年度の研究計画は、(1)高強度化セメント硬化充填材の開発および、(2)高強度化セメント硬化充填材を用いたコンクリートの諸物性の確認(前半)である。 (1)に関しては、コンクリート塊から再生骨材を製造する過程で排出されたセメント系微粉末を模擬した低水セメント比型および高水セメント比型のセメント系微粉末を製造し、粉砕処理(150μm以下)を施した後に、電気炉を使用して、全4温度域の高温環境(300〜1100℃程度)で所定時間暴露させる改質処理を行なった。この各種改質微粉を使用して、ペーストの力学特性を評価したところ、700℃加熱の試料が普通ポルトランドセメントによる比較試料の7割程度の強度を発現(28日強度)し、化学組成も普通ポルトランドセメントに近似されるようになる傾向が確認された。加熱改質による水和性の回復が図られたといえる。また改質処理後の化学組成を適切に調整することにより、新たな結合材として実用が期待できるといえる。 (2)に関しては、上記(1)の改質処理により得られた粗粒分を、焼成により生じた脆弱部分を差別化する分級処理を行ない、強化部として残った高強度化セメント硬化充填材(0.5〜2.5mm)を細骨材として位置づけた改質セメント砂を製造した。強度レベルの異なるモルタルを製造し、力学特性を中心とした物性評価を実施したところ、300℃程度の加熱により骨材性能が向上(密度増加、吸水率低減)し、これを用いたモルタルは強度増進が認められたため、適温での加熱改質により、セメント砂を細骨材代替として使用することが可能であると考えられた。
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