研究概要 |
現存する国宝・重要文化財建造物の塔婆建築(五重塔、三重塔、多宝塔など)125基のうち、五重塔は25基(うち国宝13基)である。これらのうち,屋内にある五重小塔(3基)を除外した22基について,文献調査を行い建設年・構造形式・修理履歴のデータベースを作成した.各建物の立地条件・及び建設年代をもとに歴史地震に関する既往の研究から当該建物に被害を及ぼした可能性のあるM7以上の地震を選び,これもデータベースの項目とした.その結果,五重塔は地震にかなり大きな地震に遭遇しているものもあることが明らかになった. 山口県の瑠璃光寺,東京都の池上本門寺の現地調査を行った.更に,池上本門寺に関しては常時微動測定を行い,基本的な振動性状を把握した. これと平行して,五重塔建築の耐震性に深く影響していると考えられる構造要素である組物について,過去に行った振動台実験及び静加力試験の結果を基に理論的なモデル化をおこない,地震応答解析を行い,実験結果を理論的に再現することが可能になった. 来年度は,建物の修理報告書及び寺史などの文献調査を行うことにより,五重塔が遭遇した可能性のある被害地震による当該建物の被災の有無を調べる.更に,同じ境内のほかの建物の被災状況との比較を行う.また,地盤を含めた立地条件をデータベースに含める.また,現地調査及び常時微動測定を更に行うことにより,構造形式,特に心柱の形状が建物の振動特性に及ぼす影響を明らかにする.最終的には,組物の効果を考慮したモデル化を行い,建物全体の地震応答解析を行う予定である.
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