研究概要 |
地震動の空間変動量(振幅特性、位相特性)のうち、位相特性のばらつきについてはコヒーレンス関数を与えることにより、統計的手法に基づいて模擬地震動を作成した。今年度は、主に振幅特性の空間変動について観測記録に基づいて調べた。 振幅特性は不均質(特に地層境界面の不整形)地下構造に大きく影響されるので、安定した地盤(平行成層)と不整形な地盤を対象に地震動と微動の観測を行った。大規模な構造物基礎に対する入力地震動の空間変動を評価するには短スパンの高密度地震動アレイ観測データが必要であるが、コストや占有敷地の問題により容易ではない。そこで、5地点の比較的長スパンの地震動アレイ観測を行い、その間を微動観測データにより補間することで少ない地震観測点のデータを補強した。 この考え方は、ある一つの地点においてサイトのみに依存する地震動と微動の振幅特性が同じであるという仮定に基づいている。このことを確かめるため、地震動と微動それぞれについて同一点での水平成分と上下成分のスペクトル振幅比を比較した。その結果、安定した地盤サイトでも不整形な地盤サイトでも地震動と微動がスペクトル形状において良く一致した。従って、細かな地震動の空間変動の推定には微動データが十分代用できる可能性を表していることが分かった。なお、ここで対象とする地震動の部分は主S波部であり、長周期構造物や上下地震動を考慮する必要がある構造物に対しては、表面波部やP波部についても今後検討する必要がある。 以上の結果は、1)12th.World Conference on Earthquake Engineering(Paper No.490 on CD-ROM),2)地球惑星科学関連学会2000年合同大会(予稿集Sg-005 CD-ROM),3)日本建築学会大会(学術講演梗概集構造B-2,PP.273-274,4)2000年地震学会(講演予稿集A73)において報告した。
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