製紙工場から大量に発生するパルプスラッジ焼却灰(PS灰)は、石炭灰と同様に有効利用の用途を開拓することが重要課題である。本研究は、PS灰を結合材とした混合セメントおよび細骨材として用いたコンクリートの力学的特性・耐久性を実験的に調べるものである。以下に本年度の研究成果を示す。 1.パルプスラッジ焼却灰の混合セメントとしての有効性について 普通ポルトランドセメントに対して内割り(セメントに対する重量比で5〜40%の範囲)で段階的にPS灰を混合し、JIS試験方法に準拠したセメント試験を行い、混合セメントとしての有効性について調べた。試験結果より、強度発現は普通セメントに比べると劣るものの、30%程度まではフライアッシュセメントとほぼ同等の強度発現が得られた。また、30%まで混合したセメントを用いてコンクリート調合を行い、そのフレッシュ性状および圧縮強度・ヤング係数と材齢の関係を調べた。その結果、PS灰の比表面積が小さいことも影響してフライアッシュのような流動性の増加はみられず、混合率とともに高性能AE減水剤使用量は増加の傾向にあること、長期にわたって普通コンクリートとほぼ同等の圧縮強度・ヤング係数が得られることなどが明らかとなった。 2.パルプスラッジ焼却灰を細骨材の一部として用いたコンクリートの基礎物性について 単位セメント量を一定に固定して、パルプスラッジ焼却灰をセメントに対して外割(単位粗骨材質量を一定として細骨材に対する絶対容積比で5〜30%をPS灰で置換する)に大量に混入することで、細骨材の代替としての有効性を調べた。その結果、既往のフライアッシュコンクリートの実験結果と同様に、普通コンクリートに比べると組織が緻密化することや水結合材比が小さくなることが起因して外割調合コンクリートの圧縮強度は材齢初期から大幅に増加することが明らかとなった。以上のことから、強度特性の面ではPS灰がセメント混和材として有効であることが示された。
|