放射熱源の位置が熱放射暴露の事前に認識されていない条件下での熱放射の閾値を明らかにするための被験者実験を行った。摂南大学8号館大学院共通ゼミ室内に、八角柱のブースを製作しブース各壁面に放射パネルを配置した。放射パネルは壁面毎に表面温度の制御ができるように配線した。放射パネルの表面温度・ブース内の気温は、0.2mmφT型熱電対をデータ収集システムに接続し、1秒間隔で測定し、実験室内の温度・湿度は、サーモレコーダーを用いて10秒間隔で測定した。 被験者には、人工気候室内入室後、申告方法や熱放射暴露時の姿勢などの注意事項を説明した。申告内容は、熱放射暴露直前の温冷感と快適感の申告と、暴露中の放射方向の申告とし、熱放射を感じた時、瞬時に申告することとした。温冷感と快適感の申告後、壁面1面のみ表面温度を上昇させ熱放射暴露を行った。熱放射暴露実験は、気温27℃、28℃、29℃、30℃、31℃の5条件と放射強度・強、弱の2条件を組み合わせた10条件で行った。湿度はおおよそ40〜60%に保たれた。 暴露時の気温条件が高くなると、放射感の知覚が鈍化して、知覚温度が高くなる傾向が多少見られた。また、熱放射刺激を急激に受ける放射強度・強のほうが放射強度・弱と比べて放射を知覚する閾値が高くなる傾向が見られた。実験10条件の1035実験データを用いて各方向の閾値の平均値を算出したところ、前17.0℃、右前17.2℃、右16.2℃、右後17.5℃、後17.0℃、左後18.2℃、左17.9℃、左前16.1℃となった。被験者間の熱放射刺激の閾値は、温冷感覚や快適感覚と比較して熱放射刺激の閾値は個人差が大きかった。被験者の90%、80%、50%の人が熱放射刺激を知覚する閾値は、それぞれ22.7℃、20.8℃、16.8℃となった。
|