本研究は平成12年度および13年年度の2年間で行われる予定であり、今年度における中間報告とそれまでに得られた研究成果を次に述べる。はじめに2層壁体(多層壁体の基本的なケース)の実験モデルとして、種々の材料板を組み合わせ圧着して2層の壁体試料を作成した。材料の同種および異種、さらに材料厚さの異なるものを組み合わせた数種の試料を多数用意した。これらを用いて屋根スラブを想定した壁体の結露・再蒸発実験を行った。予め実験試料を多数作製し、それらの側面および底面を断湿した。銅板上にこれら実験モデル試料を多数配置し試料の側面を発泡スチレンにより断熱した。試料の載った銅板全体は恒温恒湿室に設置され、銅板下面を水で冷却した。室内空気の温湿度をある一定の条件に設定した後、測定を開始した。試料は室内側表面から吸湿し、内部の含水率が徐々上昇した。材料含水率が定常状態になった後、室内空気の湿度を下げて試料内の水分を放湿した。これら過程中の材料内含水率分布および温度分布、室内温湿度の連続測定を行い、測定データをパソコンに取り込んだ。またそれと並行して予め測定されている材料物性値と温湿度条件を、新たに提案した多層壁体水分移動モデルに組み込み、その現象過程について数値シミュレーションを試みた。実験結果および数値シミュレーション結果は大型液晶ディスプレイにて表示され、この実験における2層壁体中の含水率分布の変動特性が把握されると同時に、今回新たに考案した計算モデルの有効性の検討が行われた。実測される含水率分布の範囲は完全な中空層モデルと単純伝達モデルのほぼ中間的な状態になっており、残念ながら今回提案された計算モデルもまた適度な含水率分布の幅をシミュレートできないことが分かった。また学内LANにパソコン接続されたDVカメラを用いることにより実験の監視を遠隔で行うことができ、また同時にDVテープに記録を取ることが可能になった。来年度においてはさらに改良された計算モデルを多数考案し、同様のシミュレーションを多数行い、より精度の高い水分移動予測モデルを模索する予定である。
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