1)3次元数値気候モデルを用いた大阪府域における気候特性再現・構造把握に関する検討 昨年度の検討結果から、緑被率の増加や人工廃熱の削減が都市熱環境の改善(特に夜間)に有効であることが示されたことを受け、海陸風や人工廃熱の地域的な広がりといったメソスケール現象が地域熱環境に及ぼす影響を考慮すべく、昨年度構築した環境負荷関連因子に関するデータベース(土地利用、建蔽・容積率、人工廃熱分布など)を数値気候モデルの境界条件として利用することによって、大阪府域の気候特性の再現ならびに構造の把握を試みた。その結果、大阪府域の気候特性(気温および風の分布性状)を全般かつ地域的に再現した上で、特に人工廃熱が都市気温や地域の風況に与える影響に関して、その地域差や時間特性、対策範囲の影響など様々な知見を得ることが可能となった。 2)種々の都市熱環境改善策が都市熱環境に及ぼす影響に関する検討 上述の3次元数値気候モデルを用いて、大阪府域において具体的な都市熱環境改善策を適用した場合の都市気温や地域の風況に与える影響について定量評価を行った。具体的な策として、「廃熱潜熱化」、「道路や屋上の緑化」、「高反射素材の利用」、「畜熱冷房システムの普及」、「CGS地域熱供給システムの導入」を取り上げた。 3)高次指標による都市熱環境改善策の定量評価 各改善策の影響を市民や行政者レベルで理解しやすい形式で表現し、今後の都市熱環境緩和対策の基礎資料として活用することを目的として、「SET*」、「30℃超え延べ時間」、「陸風変化時刻」、「大気熱負荷量」、「電力需要変化量」の各指標により定量評価を行った。例えば、日中気温の低下が見られた「畜熱冷房システム」を導入した場合には、気温低下による大阪市中央区の「電力需要減少量」は平均世帯約2万5千戸の日電力消費量に相当することが示された。
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