北九州及びルール工業地帯では、基幹産業を支持するために都市基盤が整備されたが、1960年以降、それまでの基幹産業が衰退し始め、それに伴い多くの工業用インフラと産業施設が工場跡地として、第三次産業期において再利用されず放置されている現状にある。さらには、工業用地、住宅用地の拡大や道路整備等によって、河川、緑地等の自然環境が徐々に破壊された。ルール工業地帯は、依然重工業地帯でありながら、多くの失われた自然環境を取り戻すため、エムシャー・ランドスケープ・パークのもとに、1989年から10年間に渡って、120プロジェクトの再自然化工事が行われてきた。この再生計画では、深刻な汚染が問題となったルール工業地帯の自然環境の回復計画だけではなく、さらに産業維持と新たな経済発展を目指すものである。この再生計画では、都市部の自然環境を守るため、既存のビオトープをネットワーク化している。これらのビオトープをネットワーク化するため、政策手法として、ビオトープ図が作成された。本研究では、ルール工業地帯の再生計画を検討し、さらに、北九州工業地帯を取り上げて、21世紀型都市基盤整備の指針を目的としている。 北九州工業地帯では、産業の衰退に伴い既存の都市基盤が十分に機能しておらず、次の産業への転換に向けて新しい都市基盤整備が急務となっている。産業構造の転換を図るに当たって工業用地の再自然化を行うことにより、これまでのインフラ整備の在り方を見直すべきである。平成13年度は、ルール工業地帯の分析に基づいて、北九州工業地帯における再自然化計画プロジェクトを検討し、さらに、自然回復を実践するための整備指針と基本計画を提案する。
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