今回の研究実績は、大きく二つにわけられる。第一は、鑑賞行為の分析における時間地理学的手法の有効性である。第二は、その知見をもとにハフモデルを援用した利用圏域の重層性である。鑑賞者の日常生活及び鑑賞行為における時間地理学的な視点による分析は、大都市郊外におけるパスと市街地中心部におけるパスの異なりを明らかにした。その上で、その相違により鑑賞前後のアクティビティの発生にも影響があることがわかった。 また、GISによる舞台芸術施設の立地分析については、そのマッチングレベルの高い政令指定都市レベルでの現状の立地状況を明らかにした。また、時間地理学的な考察より、利用圏域は、劇場施設を中心に半径15km程度のハフモデルとして定義できると考えられる。更に同一の県における各ホール間での客席数の影響とその利用圏域を宮城県を対象事例として調査・分析し状況を把握した。 その結果、現状の舞台芸術施設の利用圏域は粗密状況にあること。特に1980年以降に建設されたホールは、利用圏域が重層していることがわかった。
|