本研究は、千葉市域をモデルとして、多様な地域特性に考慮した保育環境のあり方についてその課題を明らかにするものである。より具体的には、地理的に2次元的な広がりを持つ多様な空間として地域を捉え、保育施設利用者のニーズとその空間的分布、保育施設・サービスの種類とその配置について検討し、今後の保育施設整備計画のあり方について地域計画的に新しい知見を獲得することを目的とするものである。地域的な違いを十分に考慮した保育環境の計画手法の検討を必要とすることから、現在の保育環境を、「地域、保育施設、利用者」という3つのレベルから調査し、保育環境の実態を把握する。具体的には、以下の3種類の手段により、千葉市における保育施設、地域、および利用者特性について、複数の角度から調査を行っている。 (1)千葉市内の保育施設の利用者分布(すなわち保育園・幼稚園等の圏域)の分析 (2)保育園・幼稚園の仕様(建築平面)およびサービス内容の分析 (3)保育施設利用者へのアンケート調査の実施 12年度は、(1)および(2)について、一定の実績が得られている。千葉市の認可保育所全88施設について保育所の全利用者の住所調査を行い、各地域ごとの、保育所選択特性の分析・把握を行っている。GISシステムを用いて、その特性の分析を行っているが、それによれば、現在の保育所選択は、極めて多様かつ複雑であることが明らかとなった。利用者は、自宅最寄りの保育所を利用している場合よりも、それより遠方の保育所を選択的に利用している場合が多い。また平均利用距離が3Kmを超える地域も多く、保育所への幼児の送り迎えには、自動車が主に用いられていることが推測された。このような実態が明らかになり、現在の保育所が地域施設としてどのように機能しているのか、より深く検討する必要があることが明らかとなった。
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